ヘルペスウイルスの感染力を侮るな!

ひどい性器ヘルペスにかかってしまって困っている

再発する口唇ヘルペス、どうにかならないの?

女性の性器ヘルペスがひどい場合は、生理のたびに再発を繰り返すことも。また、再発を繰り返した挙げ句、病変部位だけでなく、足のつけ根のリンパ節が腫れたり、全身症状に及んでしまうこともあるのです。

ヘルペスは、再発を繰り返すことが多い、こわい感染症です。費用的にも精神的にも、負担が大きい疾患です。

とはいえ、ウイルスが侵入して死に至るような恐ろしい病気かといえば、そんなことはありません。治療を早期に行うことで、症状がひどくなる前に抑えることができます。また、再発も減らすことができるのです。

ヘルペスは感染力が強いウイルス


ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスによる感染症です。

ヘルペウイルスは約100種類もありますが、人に感染するウイルスは8種類になります。感染したウイルスによって発症する場所、症状が異なります。

ヘルペスウイルスの種類

たくさんあるヘルペスウイルスのうち、実際に症状を引き起こすのは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)水痘・帯状疱疹ウイルスです。

ヘルペスウイルスが引き起こす感染症
  • 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)・・・口唇ヘルペス
  • 単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)・・・性器ヘルペス
  • 水痘・帯状疱疹ウイルス・・・水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹

HSV-1は口唇ヘルペス、HSV-2は性器ヘルペスやヘルペス髄膜炎の原因となります。

水痘・帯状疱疹ウイルスは、その名の通り水痘(水ぼうそう)と帯状疱疹の原因となるウイルスです。

ヘルペスウイルスを取り巻く環境の変化

そもそもヘルペスウイルス自体は、とても一般的な、ごく普通に存在するウイルスです。インフルエンザウイルスやコロナウイルスといった、危険なウイルスとは大きく異なります。

その証拠に、口唇ヘルペス(HSV-1)では、日本人の70~80%の人が感染しているといわれています。

昔は親、祖父母など家族間の頬ずりやキス、同じ食器による食事などで1~4歳までの間にほとんどの人が感染していました。

幼少期にはすでに抗体をもち、大人になって再発しても重症化することはほとんどありません。

しかし近年の核家族化、衛生面の改善で10歳の抗体保有率が6人に1人まで減少しています。

大人になって感染することで重症化するケースが増えているのです。

ヘルペスウイルスの特徴と感染経路

ヘルペスウイルスの身体は、核酸とたんぱくの殻だけでできています。自分では子孫をつくることができず、他の生物の細胞の中に入りこみ、細胞の材料から自分の子孫(コピー)をつくり増殖していきます。

ヘルペスウイルスは、皮膚の小さな傷粘膜から体内に入りこみます。傷や湿疹、アトピー性皮膚炎など皮膚のバリア機能が低下している人、風邪や疲れ、ストレスで免疫力の低下している人は、特に注意が必要です。

症状があらわれている時期は、ウイルスを大量に排出しています。そのため、感染を広げやすいので注意が必要です。この時期に接触すると、初感染者はもちろん、ヘルペス抗体があっても体力が落ちている場合は、ヘルペスに感染する確率が高くなります。

すぐに発症する人もいれば、感染しても自覚症状のあらわれにくい人、数年経ってから発症する人、何度も再発を繰り返す人もいます。

ウイルスは、基本的には、生物の細胞に寄生しないと生きられません。

しかし、ヘルペスウイルスは、細胞から離れても3時間程度は生存します。症状のある人との食器やタオルの共用を避けるのはこのためです。

研究データでは、ヘルペスウイルスは布製品で1時間、プラスチック製品ではおよそ3時間生存するとされています。

ヘルペスウイルスによる症状

HSV-1、2型と水痘・帯状疱疹のウイルスでは、症状のあらわれ方が違います。

HSV-1は口の周り、HSV-2は性器周辺に水ぶくれやピリピリとした痛みを引き起こします。一方、水痘は全身、帯状疱疹は身体の神経に沿って症状が出るのが特徴です。

近年では、HSV-1が性器で症状を引き起こすことも少なくありません。口の周りに繁殖していたウイルスが、オーラルセックスを通じて、性器に接触するためです。

単純ヘルペスウイルスは、感染すると神経細胞の内部に移動します。水痘・帯状疱疹ウイルスは神経細胞の周りに潜伏します。

感染したヘルペスウイルスは、薬では排除できません。そのうえ、免疫力が低下すると増殖し、何度でも再発します。

単純ヘルペスウイルス1型感染症

日本人の7割以上の人が感染している、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)。HSV-1は、口唇ヘルペスやヘルペス角膜炎の原因となるウイルスです。

発症する部位

HSV-1は、三叉神経に入りこみ、顔、口唇、眼、皮膚に病変を引き起こします。

HSV-1が症状を引き起こす部位
  • 唇とその周辺
  • 口の中
  • 角膜

症状の特徴

HSV-1は、発症すると再発率は低いものの、最初の発症時には強い痛みが特徴です。

口唇ヘルペスを発症すると、皮膚にピリピリチクチクとした違和感、かゆみ火照り痛みを感じます。そのあと一部が赤くなり発疹があらわれ、発疹は小さな水痘になり、かゆみ、火照り、痛みが強くなって破れてかさぶたになります。発疹の段階で症状が止まることもあります。

口唇ヘルペスの症状
  • ピリピリ、チクチクとした違和感
  • かゆみ
  • 火照り
  • 痛み
  • 発疹、水ぶくれ

およそ2週間前後で治まってきますが、抗体のない初感染の場合は、広範囲に大きめの水痘が多発して発熱、リンパ腺が腫れるなどさらに激しい症状になります。

再発の場合、皮膚のヒリヒリ感、痛がゆさなど不快感がありますが、2日~3日で水ぶくれ、発疹がでて2週間ほどで回復し比較的軽症になります。

HSV-1による感染症の種類

HSV-1は、口唇ヘルペスの他にも、ヘルペス性歯肉口内炎、咽頭炎、角膜ヘルペス、ヘルペス脳炎、カポジ水痘様湿疹などの原因にもなります。

HSV-1が引き起こす感染症
  • 口唇ヘルペス
  • ヘルペス性歯肉口内炎
  • ヘルペス咽頭炎
  • ヘルペス口内炎
  • 角膜ヘルペス
  • ヘルペス脳炎
  • カポジ水痘様湿疹

口唇ヘルペス

口唇ヘルペスは口や唇の周りに痛みをともなうかゆさがあって、不快感が続き数時間から数日で赤い発疹、水痘があらわれます。

ヘルペス性歯肉口内炎

ヘルペス性歯肉口内炎は口の中に痛みをともなう水痘があらわれ、破れて炎症をおこします。

発熱が2~5日続き高熱をともなうこともあります。発熱後2~3日で歯肉が腫れて口の中だけでなく口周辺にも水痘ができることもあり、痛みは1週間続きますが2週間ほどで回復します。

ヘルペス咽頭炎・ヘルペス口内炎

咽頭炎は口の中だけでなく咽頭にも小さな水痘ができ、破れて口内炎になることもあります。痛みが強いところが特徴で、唾液をのみこむこともつらいほどの咽頭痛燕下痛発熱がおこります。

角膜ヘルペス

角膜ヘルペスはHSV-1が角膜に感染することが原因です。片側の目にあらわれることが多いですが、両目にでることもあります。

黒目の部分潰瘍ができてゴロゴロする違和感充血物が見えにくくなります。潰瘍が大きくなると治りにくく3週間以上かかることがあり、再発しやすいため最悪失明することもあります。

ヘルペス脳炎

ヘルペス脳炎は突然あらわれる意識障害発熱けいれん発作などで、異常行動もみられます。HSV-1が神経細胞で増殖して、神経系の細胞を破壊する原因で発症する病気です。重い神経症状は死に至り、後遺症が残る場合もあります。

小児ではインフルエンザ脳症よりも症例が多く注意が必要です。発症年齢は6歳未満が多くなりますが、どの年齢層でもおこります。

カポジ水痘様湿疹

カポジ水痘様湿疹は突然38度以上の高をだし全身に倦怠感かゆみを感じ、顔面、性器、目、脳からなどに水痘が広がります。

5歳までの子供に多くみられますが、HSV-1とアトピー性皮膚炎と合併して発症すると大人でも発症します。

治療には、ゾビラックスやバルトレックスといった、抗ウイルス薬が使われます。

単純ヘルペスウイルス2型感染症


HSV-2は腰の部分にある仙骨神経節に入りこんで、性器周辺に症状を起こします。性器周辺に起こるヘルペスは性器ヘルペスと呼ばれます。

発症する部位

HSV-2は主に性的な接触によって感染し、性器お尻の周辺に病変があらわれる性感染症の一つです。

性器ヘルペスの症状の部位
  • 陰唇
  • 膣前庭
  • 子宮
  • 亀頭
  • 陰茎
  • 肛門周囲

HSV-1に感染していてもHSV-2に感染することはありますが、HSV-2に感染しているとHSV-1に感染するはありません。

日本ではおよそ10%ほどの感染者がいるといわれています。また、女性に多い病気で男性の約2倍といわれています。

症状の特徴

男性の場合は原因となる接触感染から2日~10日間の潜伏期間の後、発症します。

主に亀頭、陰茎全体に多発性の小さい水ぶくれがあらわれ、3~5日後に水痘が破れて潰瘍をつくります。太もも、お尻、肛門周辺、直腸粘膜まで広がることもあります。

男性の症状
  • 小さい水ぶくれ
  • 潰瘍
  • 倦怠感
  • そけい部リンパ節の圧痛

初感染では症状が強く、尿道にも病変があらわれます。全身の倦怠感そけい部リンパ節の圧痛もおこります。

潰瘍から二次感染で他の菌が侵入すると粘膜まで炎症が拡大することがあります。

男性は再発率が高く、50%以上が3ヵ月以内に再発しています。

女性の発症部位は外陰部、膣の入り口、お尻また、子宮頸部や膀胱などです。

感染してから2日~10日は症状のない潜伏期間になり、この後発症します。

38度以上の発熱、感染部位に強いかゆみがあって直ぐに小さな水痘が密集してたくさんあらわれ、その水痘が破裂してびらん潰瘍になります。

女性は痛くて排尿ができないほどで、脚のそけい部のリンパ節が腫れて痛みをともないます。

女性の症状
  • 強いかゆみ
  • 小さい水ぶくれ
  • 潰瘍
  • 排尿障害
  • そけい部リンパ節の圧痛

処置をしないと3週間、薬物使用で1週間ほどで回復します。初感染してから数ヶ月で再発することもあります。

女性の場合の再発は発熱がなく、痛みやかゆみが軽くあまり強い症状があらわれません。そのためパートナーに感染する可能性が高いという問題があります。

また出産時に産道でウイルスが増殖すると、新生児ヘルペスを発症する母子感染の原因になるため帝王切開が必要になる場合があります。

HSV-2は初感染であっても、1型の抗体がある場合、下半身の発疹が少しある人、下半身の違和感を少し感じる人、まったく症状のあらわれない人もいます。

先にHSV-1に感染している人がHSV-2に感染しても明らかな症状がでない場合があります。しかし初感染でHSV-2に感染した場合は、ひどい症状があらわれます。

再発の原因は免疫の低下

HSV-2はとてもしつこく再発するため、再発時に発症して気がつく場合もあります。HSV-2の再活動するきっかけは発熱、性交渉、過労、ストレス、紫外線、歯科治療などです。

過労、ストレス、睡眠不足や偏った食事は免疫力を低下させ、再活動させてしまいます。

紫外線は皮膚に与えるダメージが原因で免疫機能を下げ、寒さも身体の機能を下げ、再発のリスクを高めます。

性器ヘルペス再発のきっかけ
  • 過労
  • ストレス
  • 睡眠不足
  • 偏食
  • 紫外線
  • 寒さ

過労やストレスなどで免疫力が低下すると、再発は仙骨神経節に潜伏していたHSV-2が増殖して再発します。

女性はストレス、月経前に再発することが多いです。

帯状疱疹

帯状疱疹は、身体の中に潜んでいるヘルペスウイルスの一種の水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発症します。

発疹する年齢は60代が中心で、50~70代に一番多くみられるのが特徴です。通常、生涯に一度しか発症しませんが、極度の免疫力低下で再発することが希にあります。

発症する部位

症状は左右どちらかの神経にそって帯状に発症します。胸から背中にかけてが最も多く全体の半数以上が上半身に発症します。

そのほか、顔面眼の周囲も発症しやすい部位です。

帯状疱疹の発症部位と発症率
  • 頭部~顔面(17.6%)
  • 頸部~上肢(14.5%)
  • 上肢~胸背部(31.2%)
  • 腹背部(19.6%)
  • 腹背部~下肢(17.1%)

症状の特徴

身体の左右どちらか一方にピリピリ、チクチクと刺すような痛みからはじまります。やがて赤い発疹小さい水ぶくれが帯状にあらわれてきます。

一度に2ヶ所以上にあらわれることはありませんが、多くの場合強い刺すような痛みを伴います。その痛みは衣類と触れるようなわずかな刺激にもピリピリして、不眠症になるほどです。

帯状疱疹の症状
  • ピリピリ、チクチクと刺すような痛み
  • 神経に沿った赤い発疹
  • 小さい水ぶくれ

発症からしばらく経つと水痘が破れ、かさぶたになっておさまります。

痛みがあらわれ始めてから、かさぶたになって治るまで約3週間~1ヵ月ほどかかります。

子供のころ水ぼうそうにかかったことのある人なら、誰でも帯状疱疹になる可能性があります。

水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、水ぼうそうを発症します。水ぼうそうが治った後も水痘・帯状疱疹ウイルスは体内に潜伏し、加齢、ストレス、過労などによる免疫力の低下によって再発します。

水痘・帯状疱疹ウイルスは、帯状疱疹の患者から乳幼児に感染し水ぼうそうを起こすことがあります。一方、帯状疱疹の患者から感染してもいきなり帯状疱疹を起こすことはなく、水ぼうそうとして発症します。

水ぼうそうにかかったことがなく予防接種をしていない人HIV感染症の人ややステロイドを長期内服している免疫力の弱い人、妊婦子供は要注意です。

妊婦が帯状疱疹に感染すると、赤ちゃんが先天性水痘症候群新生児水痘を発症する恐れがあります。

出産を考えている人は妊娠する前にワクチンをうっておくと予防になって安心です。妊婦が帯状疱疹を発症した場合は、赤ちゃんへの影響はありません。

水痘・帯状疱疹ウイルスによる症状

水痘・帯状疱疹ウイルスで帯状疱疹になると、皮膚症状が回復しても痛みだけが残りいつまでも続く場合があります。これは帯状疱疹後神経痛といって、高齢者に多い症状です。高齢者は回復が困難なためにこの帯状疱疹後神経痛が残りやすいといわれています。

また、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因になる感染症の一つに、ラムゼイ・ハント症候群があります。

ラムゼイ・ハント症候群の主な症状は顔面神経麻痺、耳の中や耳周囲の疱疹難聴耳なりめまいなどです。中でも初期症状として一番多いのは、顔面片側の麻痺になります。

ラムゼイ・ハント症候群の症状
  • 顔面神経麻痺
  • 耳の中や周囲の疱疹
  • 難聴
  • 耳鳴り
  • めまい

ある日突然顔の片側が動かなくなり、顔が引きつって歪みます。

顔面神経麻痺をおこして水痘・帯状疱疹ウイルスが脳神経まで広がると片側の耳が赤くなり、耳の中、耳の周りに水痘やかさぶたがあらわれます。中には顔面神経麻痺と同時に発症することあります。

内耳神経が水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると、激しい耳の痛み、音が聞こえにくくなったり、耳鳴りの症状が強くあらわれることがあります。

身体のふらつき、めまいをともない、聴覚が低下することもあります。